二十数年前、私たちの会社は先代が始めた小さな居酒屋さんからスタートしました。
なけなしの資金。
恵まれない外部環境。
ほぼ無いに等しい経験。
そんな手探り状態で始めた居酒屋さんは、何度も何度も閉店の危機に瀕することになりました。
しかし、先代にも私にも諦めきれないものがありました。
それはお店を持ちたい方ならだれもが想う『お客様に喜んでもらう』こと。
口には出し、実行してみたものの、それは簡単なことではありませんでした。
どんなに強く思っても、どんなに頑張ってみても、それがお客様の心に届かなくては意味がないのです。
先代と私、そして仲間たちは膨大な時間を使い試行錯誤を繰り返しました。
小さなことから始め、自信を深めたら大きなことへ繋ぐ。
その繰り返しは小さな成功となり、少しずつ確実にお客様の心に届きはじめました。
この頃から先代は体調を崩すことも多くなってきましたが、それでも店に立つことは何よりの喜びにしていました。
経営は私に継承され、私の結婚を機に家内も店に立つようになりました。
やがて店はちょっとした繁盛店となり、もう少し大きなお店への移転へとつながりました。
移転後は正社員も雇い、従業員数も増えました。
それに伴い売り上げも右肩上がりに行く筈でしたが、半年で見事な急降下を味わいます。
それと期を同じくして先代の体調が悪化し、余命宣告通り三ヶ月でこの世を去りました。
移転費用である数千万円の借金を背負い、私は途方にくれました。
しかし悩んでいる時間はありません。
もう一度思い上がった頭を振り出しに戻し、何も無かった創業時から今までをたどりました。
そしてシンプルな答えに至ります。
「結局、何も無いからこそ今そのままの持ち味を活かさなくては」
私はこれまで経験してきたこと、これからの想いを明文化し、自分たちの持ち味を活かす戦略の書にしました。
成果はすぐにとは行きませんでしたが、少しずつ売り上げは戻り始め、やがて上向きはじめました。
売り上げが上向いた頃、新たな借り入れをして想いを形にした外装だけの改装工事に踏み切りました。
この事により更に我々の持ち味を活かすことに成功し、店は盛況を博しました。
その後、法人化を果たし更なる挑戦を繰り返しています。
何か新しいものを求めるのではなく、今ある持ち味をリテイストして新しい価値に変える。
どんな人にもお店にも、必ず持ち味はあるものです。
そういう私自身も失敗を繰り返しながらリテイストをしてきた人間です。
テイスト・エッジジャパン株式会社
代表取締役
藤原 修司